作り手 · 9分 · 2026年10月14日
「手作り」の値段を、項目ごとに
窯の時間、割れる分、そして焼成を生き延びない十一パーセント。香炉ひとつの数字を、全部公開します。
「手作り」は数字を隠す言葉です。ここに、当店の無釉の香炉の数字を全部出します。
香炉ひとつの原価
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 粘土 1.4 kg | ¥6 |
| ろくろ 22 分(時給 ¥45) | ¥16.50 |
| 素焼き、窯詰め分の按分 | ¥9 |
| 本焼き、1280°C | ¥14 |
| 割れ分の見込み(11%) | ¥5 |
| 梱包 | ¥7 |
| 生き残った一点あたりの作業場原価 | ¥57.50 |
作業場から当店への卸値は ¥96 で、彼ら自身の原価に対して 67% の粗利です。これは気前のよい数字ではありません。小さな窯を開けたままにして、四人に給料を払い、十五年ごとに窯を入れ替えるのに、およそこれだけかかるという数字です。
当店はこれを $118 で売ります。PayPal の手数料、送料、そして届いて傷んでいたり返品されたりする十一パーセントを引くと、当店の粗利はおよそ 34% です。よい月で、出荷の実費よりわずかに多く残る程度です。
十一パーセント
ここが、いちばん信じてもらいにくい数字です。百点のうちおよそ十一点は、二度目の焼成を生き延びません。粘土が割れ、釉が流れ、高台が窯の棚板に融けつきます。品質の問題ではなく、岩を 1280 度まで熱せばそうなる、ということです。
売り手はそれぞれ違う扱いをします。低温で焼いて何も割れないようにし、重くてくすんだ品を売る人。損失を高い値段に隠す人。当店はどちらもしません。損失を値段に織り込み、それが何であるかを書きます。
なぜ公開するのか
理由は二つです。
一つ目は、数字を知っているお客様は値引きを求めなくなることです。値引きの出どころが、どこにもないからです。やり取りは短くなり、よくなります。
二つ目は、商売の話ではありません。手作りの品について買い手が知っているのが「本物である」ということだけなら、値段が高く仕上がりが不揃いなときに、驚きは何度でも繰り返されます。数字を伝えることが、その驚きをなくす唯一の方法です。
当店がしないこと
機械で作った品を手作りとは書きません。このサイトのどこにも「アルチザン」という言葉は使いません。測っていない重量は書きません。
そのせいで、カタログは二十ページです。四百ページにもなりえます。